眠りたくても眠れない夜が続いたら、睡眠薬を飲めば眠れるのかな・・・と考えませんか?
とはいえ、依存や副作用が怖くてなかなか手が出せずにいるという人もいるのではないでしょうか。
薬ですから少なからず副作用はありますが、すべての睡眠薬が危ないというわけではありません。用法・用量を守っていれば健康を害することはないですし、死に至ることはまずないといっていいでしょう。
危険なイメージのある睡眠薬は1900年代前半のもの。現在では、大きなリスクが大幅に軽減された薬が主流となっています。
効果と副作用について正しい知識をもち、過剰な不安をなくしていきましょう。
睡眠薬の変遷
「睡眠薬は危険な薬」と、どうして思ってしまうのでしょうか。
映画や小説で睡眠薬の過剰摂取で自殺する描写があるから?
デート・レイプのような犯罪で用いられているから?
さまざまな理由によって、睡眠薬=怖いという先入観が植えつけられてしまっているのかもしれません。しかし、睡眠薬の作用機序と効果、副作用についての理解を深めることができれば、マイナスイメージは払拭できるはず。
正しい知識によって、睡眠薬への不安をなくしていきましょう。
バルビツール酸系睡眠薬の特徴
1920年代~1950年代後半の睡眠薬といえば、バルビツール酸系薬剤です。
中枢神経を抑制する作用があり、鎮静薬、麻酔薬、抗てんかん薬などでも用いられていました。
脳の大脳皮質や脳幹に作用することで覚醒状態を抑制するという点ではベンゾジアゼピン系と同じですが、治療に用いる量と致死量が近いというのが最大のデメリット。
高用量の服用で死に至るうえに耐性がつきやすく、依存性も高いという点で、安全に服用を続けることは困難です。
治療中の投与過多で死亡患者が出てしまったり、過剰摂取によって女優が自殺したケースもあり危険な薬というイメージが定着。医薬品の乱用抑制を目指す「向精神薬に関する条約」によって国際的に管理されています。
1960年代にベンゾジアゼピン系薬剤が登場してからは、不眠症の治療に用いられることはほとんどなくなりました。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴
現在、睡眠薬として活用されているのは、ベンゾジアゼピン系薬剤と非ベンゾジアゼピン系薬剤の2種類です。
耐性(有効成分が効きにくくなっていくこと)や依存性のリスクが低く、摂取量を誤ったとしても死亡することはないのがベンゾジアゼピン系の特徴。
GABAという脳内伝達物質の働きを増強するのが主な作用です。
GABAは中神経系を抑制するので、脳の機能を低下させます。緊張や不安、興奮を和らげる催眠作用に加えて筋弛緩作用もあり、心身ともにリラックス状態に。
脳を落ち着かせてくれるので抗不安薬にも多いタイプです。
さらに、睡眠だけに特化して作られたのが非ベンゾジアゼピン系。
スムーズな入眠効果はそのままに、筋弛緩作用が少なくなっているので転倒やふらつきといった副作用が減っているのが大きなメリット。筋力が弱くなっている年配の方でも安心して服用できる睡眠薬です。
睡眠薬の今と昔を比較
睡眠薬がコワイというのは昔の話だとしても、現在の睡眠薬がどのくらい安全なのかは気になるところ。
“耐性・依存性が軽減されている”“死亡リスクがほどんどなくなった”というだけで、副作用はあるのです。
過去と現在ではどう変わってきたのか?
今の睡眠薬で懸念されているリスクとは?
危ないと言われていた薬、安全と言われている薬について比較してみましょう。
睡眠薬の副作用
体が薬に慣れて効きにくくなるまでが早く、依存性が高い
断薬する際の離脱症状が激しく、幻覚・幻聴・悪夢・ふるえなどが起こりやすい
治療に用いる量と致死量が近いため管理が難しく、高用量で死亡する場合がある
眠気を引きずりやすい
ふらつきによる転倒
妊娠中には胎児に催奇形性(口唇口蓋裂)が起こりやすい
長期服用によって耐性つき、依存性が高まる
こうしてみると、昔の睡眠薬は死のリスクが高いゆえに危険視されていたことがわかりますね。
比べて現在の睡眠薬は死亡の危険をはらんでいるわけではなく、服用後に見られる体調の変化や長期服用の安全管理についての意識が重要。
睡眠薬だから危ないというイメージは捨てて、安全に服用するにはどうすべきかを知ることが大切です。
安全に治療するには
睡眠薬を使って眠ることが危険ではないとわかっても、油断は禁物です。
眠れないという悩みを解決しながらも、副作用についての意識は常にもっておかなければいけません。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬はリスクが少ないとはいえ、
・常に必要最小限の服用量で
・長期服用しない
・用量を守って過剰摂取は絶対にしない
といった点を守ることは必須。
服用後には、自分や周囲の安全を守るために寝床から出ないことも大切です。
外出や車の運転なんてもってのほか。めまいやふらつきといった副作用が出てしまったら、重大な事故を起こしかねません。
薬の特徴と副作用についての正しい知識を持ち、安心かつ安全な治療を心がけたいですね。