さまざまな種類がある睡眠薬のなかで、ベンゾジアゼピン系としてよく用いられているのが「ハルシオン」 「サイレース」 「ロヒプノール」。
ハルシオンはトリアゾラム、サイレースとロヒプノールはどちらもフルニトラゼパムという成分からできていて、それぞれの商品名で流通しています。
いずれも脳の緊張や興奮状態を緩和させる作用によって、入眠を促進。
抗不安作用や筋弛緩作用にも優れているので、睡眠をより安定させてくれる効果もあります。
作用が強い分、副作用や依存が懸念されることから、向精神薬に区分されていて医師の処方によってのみ服用可能。投与日数にも制限が設けられています。
ここでは、処方薬の中で定評のある睡眠薬について、作用のしかたや効果の差について詳しくご紹介します。
ハルシオンはどんな睡眠薬?
ハルシオンの効果
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴として、脳の働きを弱めて眠気を促がしていく作用があります。
薬が効き始めると「バテバテに疲れて今にも寝てしまいそう」な状態になり、すんなりと眠ることができるとされています。
ハルシオンの効き方としては、
・服用後1.2時間ほどで血中濃度がピークに達する
・半減期(≒作用時間)は2.9時間
半減期は成分の血中濃度がピークになってから半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間の目安。血中濃度が半減すると、効果はほとんど感じられなくなります。
強引ともいえる入眠効果と優れた即効性を持っているので、入眠障害の人には最適な睡眠薬と言えます。
ハルシオンの副作用
作用が早く強い分、副作用にも十分な注意が必要です。
ハルシオンは飲んだあと急激に効いてくるので、脳に中途半端な覚醒状態が起こってしまいます。眠ろうとしているのに覚醒が起こるので、普段通りの行動はとれるもののその時のことは覚えていない「前向性健忘」が起きやすくなるのです。
また、眠る前や途中で起きたときに、足元がふらついたり転んでしまうことがあります。
半減期が2.9時間ととても短いため、薬のキレは良好です。
しかし、強く効いてキレがいい薬というのは依存や乱用につながりやすいというデメリットでもあります。他人を眠らせたいときにも使いやすいため、犯罪に用いられやすいという恐ろしい面も。乱用の影響が危惧され、ヨーロッパでは販売が中止されている国もあるほどです。
サイレース・ロヒプノールはどんな睡眠薬?
サイレース・ロヒプノールの効果
サイレースもベンゾジアゼピン系なので、脳の機能を穏やかにして眠りを促します。
薬の効き方はハルシオンと異なり、
・服用後1~1.6時間ほどで血中濃度がピークに達する
・半減期(≒作用時間)は7時間
入眠効果に優れていますが、作用時間の長さが特徴。
作用は7時間続くので、中途覚醒や早朝覚醒で悩む人にもってこいと言えるでしょう。
サイレース・ロヒプノールの副作用
作用が強く長く効く分、副作用も強く現れることがあります。
7時間も作用が続くので、薬が身体から完全に抜けきるまでには起きてから半日以上かかります。起床時刻になっても眠くて起きられないという人もいれば、日中に眠気を引きずってしまう、だるさが残るという人も。
比較的効きが早い薬なので、ハルシオンと同様に前向性健忘が起こりやすいのも副作用のひとつ。
依存や乱用の危険性も高く、アメリカでは麻薬と併用したり自殺に用いられたりしたことから、病院でも処方禁止になりました。
ハルシオンとサイレース、どう使う?
ハルシオン、サイレース・ロヒプノールの特徴をまとめると、いずれも不眠症治療のはじめの段階で用いられる薬ではないことがわかります。
睡眠薬の服用は、非ベンゾジアゼピン系で抗不安作用や筋弛緩作用が少ない薬からスタート。
超短時間型~短時間型で眠れるかを試してみて、それでもなかなか眠れない、途中で起きてしまう、睡眠が維持できないといった症状が改善されないのであれば、ベンゾジアゼピン系の薬に移行します。
また、超短時間型睡眠薬は寝つきはよくなるものの、睡眠時間が短めなのが難。
ショートスリーパーなら大丈夫ですが、6時間以上は眠らないと疲れがとれない、熟睡した感じがしないという人は、超短時間型で入眠効果が高い薬に加えて、サイレースのように半減期が長めの薬を併用することもあります。
たとえば、
入眠・アモバン(非ベンゾジアゼピン系)+睡眠継続・サイレース(ベンゾジアゼピン系)。
自分の症状に合わせてどんなタイプの睡眠薬をどう使うかは、医師の判断を守ることが大切。
一度の処方で効果が得られなければ、量を増やしてもらう・違う薬に変えてもらう、といった相談をしてみましょう。