不眠症で精神科を受診したとき、処方されることが多い睡眠薬が「マイスリー」です。
英語の「my sleep(マイ スリープ)」のpをはずしてマイスリーというのがネーミングの由来だそう。
どんな効果が認められているのか?副作用の危険性は?など、マイスリーが広く使われている理由についてみていきましょう。
マイスリーとは
マイスリーってどんな睡眠薬?
主成分「ゾルピデム」のマイスリーは、睡眠薬の中でも非ベンゾジアゼピン系に分類されています。
脳の緊張・興奮状態を抑制するGABAの働きを強める作用で睡眠を促がし、同系列のベンゾジアゼピン系薬剤に比べてより睡眠に特化しています。
作用の特徴としては、
・筋弛緩作用によって身体の緊張状態を和らげる
・効果の発現が早く、成分のキレも早い
などがありますが、非ベンゾジアゼピン系のマイスリーは筋弛緩作用が弱まっているため、ふらつきや転倒といった副作用が減少しているのが魅力。
効果が得やすくリスクが少ないことから、不眠症で病院を受診するとはじめに処方されることが多いようです。
また、マイスリーは向精神薬に区分されているため楽天やアマゾンといった国内ECサイトや、個人輸入代行サービスの通販では販売されておらず、入手するためには医療機関で処方される必要があります。
マイスリーの効果
睡眠薬の効果は、作用時間の長さがひとつの目安とされています。
作用時間は薬の血中濃度の移り変わりによって判断され、最高濃度から半減するまでにかかる時間(半減期)によって4つに分類されます。
・超短時間型/半減期2~4時間
・短時間型/半減期6~10時間
・中時間型/半減期12~24時間
・長時間型/半減期24時間以上
マイスリーは超短時間型。
薬を服用してから1時間以内には眠気が訪れ、3~4時間ほど作用が持続します。
ですから、「横になってもなかなか寝つけない」といった入眠障害に悩む人にはおすすめの睡眠薬と言えるでしょう。
成分が抜けていくのが早いので、翌朝に眠気を引きずることがなくスッキリと起きられるというメリットもあります。
しかし、薬のキレがいい分、長時間ぐっすり眠りたいという人には不向きです。夜中に何度も目覚めてしまう中途覚醒や、起床したい時刻よりも大幅に早く起きてしまう早朝覚醒には、短時間型~中時間型の睡眠薬を用います。
マイスリーには5mgと10mgの錠剤があり、はじめての人は5mgから様子を見ます。
最大量は10mgなので、眠れないから・途中で起きてしまうからといって、自己判断で10mg以上服用することは絶対にやめておきましょう。
マイスリーの副作用
健忘(物忘れ)=「小人の靴屋」登場
マイスリーは入眠効果が高い睡眠薬ですが、急激に作用するために起こりやすい副作用があります。
「前向性健忘」と言われる記憶障害のひとつで、服用後から寝つくまでのあいだに何を話したか、どんなことをしたかなどを覚えていないという症状が出ることがあります。
これは、睡眠薬によって脳に中途半端な覚醒状態になってしまうことで記憶に関する脳の機能が低下するために起こるといわれています。
自分の知らないところで誰かが何かをしているのでは?と思ってしまうような状況を、グリム童話の「小人の靴屋」にかけて“小人が出た”ということも。
マイスリーを服用している人が集まるネット掲示場では、
・ダイエット中なのに小人が来てラーメンを食べていた
・昨日の小人さんはいろんな人に電話してた
・トイレじゃないところで小人がやらかしてる
といったさまざまな体験が投稿されていて、健忘は現れやすい副作用だということが分かります。
自分の意図しないところで起こした行動によって人間関係を悪くしてしまったり、重大な事故を起こしてしまう危険性を持つのが小人。
マイスリーの服用は、「安全な就寝環境を整えたうえで眠る直前に」を心がけましょう。
依存のリスク
依存には、
・薬の成分が体内からなくなることで体調が不安定になる身体的依存
・薬がないと眠ることができないと不安になる精神的依存
心と身体、ふたつがあります。
また、服用を続けて行くことで身体が慣れて効果が出にくくなってしまうことを耐性といい、精神・身体依存と耐性によって摂取量がどんどん増えて、睡眠薬なしではいられないという状況に陥ってしまうこともあるのです。
ほかの睡眠薬と比べて依存性は低いとされているマイスリー。
しかし、入眠作用に優れていて効果が実感しやすいので精神的依存になりやすく、作用時間が短くて薬が切れたと感じやすいために身体的依存になりやすいとも言えます。
依存してしまうと、睡眠薬を減らしたり服用を中止したりするときに、離脱症状が現れます。
頭痛、動悸、ふるえ、吐き気や耳鳴りといった身体症状や、焦燥感や抑うつなどの精神的な症状によって、やっぱり睡眠薬がないとだめだ…という悪循環に陥ってしまうことも。
睡眠薬依存にならないための注意点としては、
・少量で短期間の服用に留める
・お酒と併用しない
・体内時計を整える生活リズムを心がける
などがあります。
自分の症状に適した薬を適量使うことはもちろんですが、アルコールは薬の作用を増幅させるので一緒に飲むことは絶対にNG。
睡眠薬は眠りの補助的な役割と考えて自然に眠れるようなサイクル作りを目指すことが、不眠症の改善にとっても依存の予防にとっても重要なのです。